第2研修会は、「スポーツ傷害に対するあはき治療」をテーマに、講師に大塚鍼灸接骨院院長・大塚健彦先生をお迎えし行われました。
大塚先生は日常の臨床業務とともにサッカー選手やボクシング選手のトレーナーとしてもご活躍の先生です。そしてそういった選手のスポーツ傷害、つまり急性症状の治療に効果のある「運動鍼」を教えて下さいました。
普通の運動鍼は関節部に刺鍼し、関節運動を行わせるものです。けれども大塚先生がされている運動鍼は
- @患者に痛みのおこる運動や姿勢をとらせる
- A触診で圧痛を探してその部に刺鍼する
- B再度先ほどの痛みを引き起こす運動や姿勢をとらせる
- C痛みがなくなっていなかったり、痛みの部位が移動していたりしたらその部に更に刺鍼する
これを繰り返すうちに痛みを誘発する運動や姿勢をとっても痛みが出なくなるというものです。
大塚先生が使用されている鍼はセイリン鍼1寸0番。
具体的な刺鍼時の留意点について
- 圧痛のある刺鍼ポイントを示指あるいは母指で圧を加えながら探した後、押手をつくる時、皮膚に対する圧が抜けてしまいがちですが、ポイントを探した時に加えた圧を決して抜いてはいけないそうです。圧を抜くと皮膚の奥にある刺鍼すべきポイント(筋硬結等)と皮膚に触れている指がずれてしまうからです。
- 次に切皮する際の弾入はできる限り軽くすべきです。拝見した大塚先生の弾入する指の上下の振幅はかなり小さいものでした。仮に3回の弾入で切皮するとしたら、1〜2回目は鍼管を叩くことのないくらい軽くしなければならないそうです。
- 刺入していく時は雀たく等は行わず、速刺速抜が原則です。
この研修会では30分ほどのお話の後、大塚先生、それからスタッフの小林先生によるデモンストレーションと実技指導が行われました。
フロアの参加者の中から、体幹を前後屈させた時に腰部に痛みがあったり、下肢後側につっぱり感がある人、十数名を対象に行われました。先生の鍼を受けた参加者は腰部の痛みや下肢後側のつっぱり感が軽減したり、なくなったりし、運動鍼の効果を体感しました。
次に鍼を受けた参加者が大塚先生の手三里に刺鍼し、その際の押手をつくる動作や刺入の仕方について助言を受けました。
先に挙げたもの以外の刺鍼時の注意点
- 痛みの程度の変化を確かめながら繰り返し刺鍼するので、オーバー・ドーゼにならないように注意する。
- 押手は母指、示指以外の3指を広げて安定させる。
- 刺手は中指を皮膚に立てて安定させる。
先生の臨床経験から再現性の高い治療法を紹介してくださいました。
オーバー・ユースによるジャンパー膝に対しては内膝眼、外膝眼、とく鼻に1センチ程度関節くうに向かって刺鍼すると痛みが半減するそうです。(ただしオスグッド・シュラッター病は除く。)
刺鍼中にこれは効果が出るなと感じる手応えとして筋の攣縮があるそうです。
先生のお話では、「鍼の先に目がついている」という言葉を通して、視覚障害者でも健常者と互角に業をなしていけること、それから「名医の条件は『治せる患者を治す』こと」という言葉を通して、適当に鍼をうっても3割くらいの効果はでるけれども、私達は患者の病態を的確に把握できる知識を身につけ、何故ここに鍼をうつと効くのかを常に考えながら治療にあたらなければならないことを改めて教えられました。最後に視覚障害に屈することなく鍼治療の技術を研いてほしいと激励の言葉で締め括られました。
|